九州大学機械系の2025年夏実施の院試問題の熱工学を解いてみました。

九州大学機械系の2025年夏に実施された大学院の入試問題は2026年4月中旬から公開されています。その中の熱工学の問題を解いてみました。

例年と同様に、大きく3問出題されています.問(Ⅰ)は,理想気体の断熱圧縮の問題,問(Ⅱ)が発熱体の熱伝導の問題,問(Ⅲ)は湿り蒸気域を含む問題です。問(Ⅲ)は、熱交換器の問題と湿り蒸気を扱う問題が、ほぼ隔年で出題されています。2025年の問題は、2024年の問題に比べると、計算量はかなり少なくなっていて、計算力よりも考え方が試される内容になっています。熱工学の基本事項をきちんと理解しておく必要があります。具体的に出題内容を見てみます.

問(Ⅰ)は,圧縮機による理想気体の断熱圧縮の問題です。設問(1)から(3)までは、基本公式から直接解答を導くことができます。設問(1)はマイヤーの関係式と比熱比の定義式から解を導けます。設問(2)は、理想気体の断熱変化の式から解を導けます。設問(3)は、エンタルピー変化が、定圧比熱と温度変化で表せることを用いれば、設問(1)と設問(2)の結果を用いて解が得られます。

問(Ⅰ)設問(4)では、圧縮機の仕事を求めることが問われていますが、開いた系でのエネルギーバランスの式から、断熱状態であれば、圧縮機の仕事と圧縮機出入り口のエンタルピー差は釣り合います。ここで、注意が必要なのは、工業仕事の定義式(-∫vdp)を、状態1から状態2まで積分したときに得られる値は、気体が成す仕事になるので、マイナスの値になります。つまり、気体が外部から仕事を受けることを意味します。答えるのは圧縮機の仕事なので、工業仕事の定義式から得られる値の絶対値になります。

以降の問(Ⅰ)の設問は中間冷却時の問題です。圧力pMまで昇圧したところで、気体温度を圧縮機入口温度まで冷却して再び昇圧するケースです。この二段圧縮過程をp-v線図に書き込む場合は、状態1から断熱線に沿ってpMまで昇圧し、圧力pMで冷却されるため、pM一定で比体積は減少し、T1に対する等温線との交点まで比体積は減少します。ここから、再び昇圧を開始しますが、断熱変化と等温変化ではpのvに対する変化(曲線の傾き)が異なり、等温変化ではv-1になるのに対して、断熱変化ではv-kと曲線の傾きは急になることに注意してp2まで昇圧します。次の設問の一段圧縮と二段圧縮の仕事の比較ですが、p-v線図の圧縮過程の曲線が作る面積の比較から解が分かります。コンプレッサーの仕事は工業仕事なので、p-v線図中で、∫vdpとなる図形の面積を比較すれば、二段圧縮の工業仕事の方が小さいことは明確に示されます。

問(Ⅰ)の最後の設問は、無限に中間冷却を繰り返した場合の圧縮仕事ですが、中間冷却を無限回繰り返すことで、圧縮は等温圧縮に近づくことになります。工業仕事の定義式を等温変化として計算すれば、中間冷却を無限回繰り返す場合の圧縮仕事が計算できます。

問(Ⅱ)は、発熱体の熱伝導の問題です。設問(1)は熱流束を求める問題ですが、熱は、もともと発熱体から発生した熱が伝わるわけですから、発熱体でどれだけの熱が発生するかを計算すれば解は求まります。このとき、x軸以外の方向は単位長さを取ればよいと思います。設問(2)は平板の右端表面からの熱流束と設問(1)の熱流束を等しく置けば解は求まります。設問(3)の最大温度位置は、発熱体の温度勾配がゼロになる場所を見つけますが、熱伝導方程式を解かなくても見いだせます。つまり断熱材との接触面では温度勾配はゼロになります。

問(Ⅱ)の次の設問では、与えられた熱伝導方程式を、境界条件を考えて解いてみれば、解は求まります。次の設問のフィンの熱伝導方程式の導出は、フィン内の微小領域dxの熱の流入流出を計算します。熱の流入は微小要素dxの左面から流入する熱量のみで、熱流束の式にフィンの断面積をかければ求まります。流出は微小要素右端面からと、微小要素の表面からの熱伝達によって生じます。これらの総和がゼロになるとして式を整理すれば、設問に示された熱伝導方程式を導くことができます。

問(Ⅱ)の最後の設問は面積増加の倍率mと発熱量増加の倍率nの比較です。フィンの表面温度が全表面で、フィンの根元温度と等しくなれば、発熱量は表面積増加と同じだけ増加することができますが、このフィンの場合、それは可能か否かを考えれば解を導くことができます。

問(Ⅲ)は蒸気サイクルの問題です。設問(1)はサイクルの各状態をT-s線図に示す問題ですが、状態1,4は湿り蒸気域にあること、状態2は飽和液線上に、状態3は乾き飽和蒸気線上にあること、2つの断熱過程では、比エントロピーは等しいことなどを考慮すれば、線図を作成できます。設問(2)の乾き度の計算では、それらの点が、断熱変化の始点、または終点であることを考えれば、比エントロピーを用いて乾き度を表すことができます。

問(Ⅱ)の次の設問の受熱量と放熱量の計算は、エントロピーの定義式を用いれば計算できます。サイクルの行程に沿って積分するときは、計算結果に熱量の出入りの方向が符号で示されることになるので注意しましょう。放熱の場合はマイナスになります。熱量自体を回答するときは、その絶対値をとる必要があります。

サイクルの正味仕事は、受熱量と放熱量の差を求めればよく、前設問の結果を用いることができます。サイクルの熱効率は、正味仕事と受熱の比で計算できます。

問(Ⅱ)の最後の設問は、等圧加熱を過熱蒸気域までもっていった場合の新しいシステムの熱効率が、元のサイクルの熱効率に比べてどうなるかを答える問題です。一般的には、熱効率は、(1―(放熱量)/(受熱量))で決まるため、受熱量が増すと熱効率が高くなります。しかし、受熱量を増加させた場合に、放熱量も増加するので、熱効率が高くなることを厳密に示すには「受熱量が増加するため」だけでは、解としては十分でないと思われます。ここでは、T-s線図上では、熱量変化∫Tdsは、Tのsに対する変化曲線が作る面積で表せることを利用し、その面積の比較から熱効率の向上を説明することを考えました。状態3の点を、pH一定の等圧線にそって上昇させた点から断熱膨張させ、断熱膨張後の状態4の点が、湿り蒸気域に収まるように断熱膨張させた場合を考えます。元のシステムとこの新しいシステムの受熱量と放熱量になる図形の面積を比較します。ここで、元のシステムと過熱蒸気域まで加熱する新しいシステムの他に、仲介的なシステムとして、過熱蒸気域まで等温加熱するシステムを介在させると、元のシステムと新しいシステムの受熱、放熱の面積比較による熱効率の大小関係が、数式的にも厳密に示すことができます。

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