北海道大学2025年実施の院試・熱力学を解いてみました。
北海道大学の機械系の2025年夏実施の院試問題は2026年4月上旬から公開されています.
例年と同様に2問出題されています.問1は,理想気体の混合やエントロピー変化の問題で,問2がガスサイクルの問題です.複雑な計算はなく,基本知識に従って計算すれば解ける問題ですが,問2は計算量が多く,与えられた物理量の数値の単位に注意して,落ち着いて計算を進める必要があります.具体的に出題内容を見てみます.
問1は,ピストン・シリンダー内の気体の状態変化に関する問題です.ピストン・シリンダーは外部とは断熱されていているので,ピストン・シリンダーの全体系としての熱量変化はありません.また,ピストンが固定されている場合は,シリンダ内の隔壁の除去だけでは,体積変化はなく,ピストン・シリンダー系は仕事をしません.熱量変化も仕事も無しなので,熱力学の第一法則から,内部エネルギー変化もゼロになります.よって,隔壁の取り外し前後で気体の持つ内部エネルギーは等しくなります.ここから,隔壁取り外し後の気体温度T1が求まります.
次にピストン固定具を外して,等圧条件で加熱した場合の状態1から状態2までの仕事を求める問題ですが,等圧変化なので,p1に体積変化をかけて求めてもよいし,熱力学第一法則を用いて,熱量変化と内部エネルギー変化の差を計算しても求まります.定圧変化なので,熱量変化は,定圧比熱と温度変化,および質量の積で表されます.この過程におけるエントロピー変化は,熱量変化を用いてエントロピーの定義式から計算できます.
問1の最後の設問は,ピストン固定で,シリンダ内の隔壁を取り除き気体混合するときの過程と,ピストン固定を取り外して,定圧条件で加熱したときの過程で,それぞれの過程が可逆過程か不可逆過程かを答える問題です.可逆か不可逆かは,逆動作をさせたときに元の状態に戻るか否かで判断できます.気体混合のケースでは,隔壁を差し戻しても,混合した気体を,隔壁の挿入だけでは,混合気体を元の分離状態に戻すことはできません.加熱のケースでは,準静的に定圧条件で,加熱量と同じ熱量を除去すれば状態は初めの状態に戻せます.
問2はガスサイクルの問題です.最初の設問は,マイヤーの関係式を用いて定圧比熱と定積比熱を求める問題です.マイヤーの関係式を使う問題は他大学の試験でも時々出題されています.状態1では,状態方程式に必要な物理量が質量以外はすべて与えられているので,状態方程式から質量は計算できます.
以降の設問では,与えられた状態量と状態変化から,各過程に沿って,各状態の物理量,熱量変化,エントロピー変化などを計算していきます.熱力学第一法則,状態方程式,理想気体の準静的過程の関係式(等温,等圧,等積,断熱),エントロピーの定義式など,基本の関係式を理解していれば,計算を進めることができます.熱量の計算は,熱力学第一法則を状態の変化に沿って積分すれば求まりますが,計算結果の符号に熱移動の方向が含まれます.正の値は,系に流入する熱量を表し,マイナスは系から排出する熱量になります.サイクルの仕事は流入熱量と排出熱量の差になりますので,熱力学第一法則の式を経路に沿って積分して得られた熱量を使う場合は,符号が含まれるので,全熱量の総和になります.熱効率は仕事と入熱量の比で求まります.
院試-過去問では,旧帝大機械系熱力学・熱工学を対象とした2020年夏実施からの5年分と6年分の過去問の解答集を販売しています.答え合わせ用として,また,解法の理解用にご利用ください.

