東大2024年院試の機械工学問題1(熱工学)を解いてみました

東京大学機械系の2024年実施の院試問題は今年の3月上旬から公開されています。問題1(熱工学)では、2問が出題されています。

第1問は、蒸気圧縮冷凍サイクルの問題です。圧縮機、凝縮器、膨張弁、および蒸発器で構成される冷凍サイクルの圧力-エンタルピー線図、温度-エントロピー線図を書くことが求められています。システム構成機器の中で、凝縮器と蒸発器では、作動流体の圧力は一定に保持されます。凝縮器は放熱なのでエンタルピーは減少し、蒸発器は加熱なのでエンタルピーは増加します。また、作動流体が湿り蒸気域にある場合は、飽和液線、または飽和蒸気線に到達するまでは、温度変化も生じません。機器の中で損失を伴うものは膨張弁だけですが、膨張弁では、流体の運動エネルギーを無視できればエンタルピーが保存されます。サイクルの問題では作動流体の運動エネルギーは無視して良いと思います。また、圧縮機は損失無しの等エントロピー変化になります。各機器での圧力変化、エンタルピー変化、温度変化、およびエントロピー変化の増減方向が把握できていれば線図を描くことができます。第一問の2つ目の設問では、凝縮器内の過熱蒸気から飽和蒸気までの間の過熱蒸気の温度を、エントロピーを変数とする関数で表すことが求められています。過熱蒸気のエントロピー変化を、熱力学第一法則を用いて計算すれば、エントロピーが温度の関数として表せます。その式から逆に、温度をエントロピーを変数とする式に変形することができます。

第二問は冷却円管の非定常熱伝導の問題です。初めに円管の半径方向任意の位置での微小円環領域に流入する熱量と流出する熱量の式を求めさせています。熱流束が温度勾配と熱伝導率の積で表されることを用いて、微小領域に流入する熱量を表します。この問題では微小領域が円環体であることに注意します。流出する熱量は、半径方向にdr離れた位置での熱流束をr点での熱流束をテーラー展開してdrの1次の項までで表します。流出する熱量をマイナスとして流入熱量との和を取れば、熱伝導方程式が導けます。熱伝導方程式の導出は、熱工学が院試の試験科目対象になっている大学で、時々出題される問題です。本問題では、非定常熱伝導方程式が導かれ、この方程式は円筒座標系で表された微分方程式になるため、非定常方程式のままではベッセル型微分方程式の一般解を求めるなど、解法は難しくなります。しかし、設問では水の温度分布が定常状態になるときの解を求めればよいので、温度の時間微分項を0とした定常問題に書き換えることができます。設問から境界条件としてt=t0,r=r2での温度T=T2を与えることができます。もう一つの境界条件は、円管外表面(r=r1)で熱流束qwを与えることができます。この2つの境界条件で、定常熱伝導方程式は解けます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です