東京科学大学2025年院試の熱力学を解いてみました。

東京科学大学の機械系の2025年夏実施の院試問題は2026年2月上旬から公開されています。

 全4問が出題されています。問題数は多いですが、複雑な計算はなく、熱力学の基本や基礎式を理解していれば解答できる問題だと思います。

 問1は、熱力学の基礎事項と可逆過程における基本的な計算方法が問われる問題です。(1)は閉じた系、開いた系、孤立系の定義です。教科書などでは、基本概念と熱力学第0法則の章で、説明されている事項です。一度、きちんと確認しておくと良いと思います。(2)は等温過程、等積過程、等エントロピー過程の一定値を答える問題です。等温過程と等積過程は気体の状態方程式から一定値が導かれ、等エントロピー過程は、断熱の式を覚えておく必要があります。(3)はピストン・シリンダー内の理想気体の状態変化を計算する問題です。(3)-(ⅰ)は等温変化なので状態方程式から計算できますが、気体の圧力はピストン外表面に作用する外気圧力とピストン質量で決まります。(3)-(ⅱ)は断熱変化するときの仕事の計算ですが、仕事の定義式に、断熱変化の式を代入して体積V1からV3まで積分すれば解が得られます。(3)-(ⅲ)は定積変化の計算ですが、内部エネルギーの変化が問われていて、温度変化が与えられているので、定積変化を特に意識することなく、理想気体の内部エネルギーの定義式によって解を導くことができます。

 問2も理想気体の状態変化の計算ですが、ここでは、エントロピーに関する問いが主体になります。(1)は系に出入りする熱量の計算ですが、これはエントロピーの定義式を変形すれば、熱量の式になるので、それを積分の形にすれば解になります。(2)はエントロピー変化の式の問題です。これもエントロピーの定義式から出発して、熱量を熱力学第一法則で表せば導けます。熱力学第一法則で熱量は、内部エネルギーと仕事の和で表せますが、内部エネルギーの代わりにエンタルピーを用いても表せます。式(1)は内部エネルギーを用いた式を、式(2)はエンタルピーを用いた式を使えば、解は求まります。(3)はT-s線図における温度勾配を求める問題ですが、定積変化なので、前設問(2)の式(1)が適用できます。(4)は断熱自由膨張前後の気体温度、圧力、エントロピー変化を計算する問題です。自由膨張自体は何も仕事はしません。また、系は断熱されているので、熱の出入りも仕事もない時に、過程の前後で保存されるものは、気体の質量と内部エネルギーです。この条件から自由膨張後の温度、圧力が求まります。エントロピー変化は、温度、圧力の結果を使って求めることができます。

 問3はオットーサイクルに関する問題です。オットーサイクルは断熱圧縮、等積加熱、断熱膨張、等積冷却からなるサイクルです。断熱過程ではエントロピーは一定になります。また等積加熱では過熱により温度は上昇します。これらに対応するT-s線図を選択肢の中から選定します。サイクルの仕事は、断熱圧縮と断熱膨張時に発生します。仕事の定義式に断熱の式を用いて、それぞれの過程で計算して、それらを加えればサイクルが成す仕事が求まります。圧縮過程では仕事は外部から成されるので負になり、膨張過程の仕事は外部に成す仕事まので正になります。これらを足し合わせたものが、サイクルが外部になす仕事になります。熱効率は、サイクルへの入熱量に対する仕事の比になります。入熱は定積加熱過程のみで発生しますので、熱量変化は熱力学第一法則の式を状態2から状態3まで積分すれば得られます。先に求めた仕事をこの熱量で割れば熱効率が求まります。最後に、定積加熱での圧力を上げた場合のサイクルの熱効率が、圧力を上げる前のサイクルの熱効率に比べてどうなるかが問われています。前設問の解答でサイクルの熱効率が各状態での温度を使って表せることを示しますが、状態1の温度と状態4の温度を断熱の式を使うと熱効率は温度に寄らないことが導けます。圧力を上げた場合についても、同様にして、状態1の温度と状態6の温度を断熱の式で変形すると、熱効率は温度に寄らないことが導け、両者の熱効率の比較ができます。

 問4は冷凍サイクルの問題です。蒸気圧縮式冷凍サイクルなので、作動流体は、飽和液、湿り蒸気、過熱蒸気の領域で動作します。冷凍サイクルは熱機関の動作と逆方向の動作をするため、ベースとなるサイクル名に逆をつけて、例えば逆カルノーサイクルなどと呼ばれます。p-v線図、T-s線図では、動作は、反時計方向に回ります。圧縮過程(状態1→2)は断熱なので、T-s線図中では、エントロピーは一定です。また、膨張弁(状態3→4)ではエントロピー増加が発生し、凝縮器(状態3→4)では温度低下が発生することに着目すれば、選択肢の中から適正なT-s線図が決まります。最後に動作係数が問われていますが、動作係数は、圧縮機での仕事量に対する蒸発器(状態4→1)での吸熱量になり、圧縮仕事も吸熱量も、それぞれの出口と入口のエンタルピー差で表すことができます。

 院試-過去問では、旧帝大機械系熱力学・熱工学を対象とした2024年夏実施までの5年分の過去問の解答集を販売しています。答え合わせ用として、また、解法の理解用にご利用ください。さらに、東京科学大学の過去問解答集では、上記の2025年の過去問を含めた6年分の解答集も販売いたします。

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