京大2025年院試の熱工学を解いてみました
京都大学機械系の2025年実施の院試問題は昨年の12月から公開されています。大きく2問出題されています。
問題2-1は、大きく3つの設問から成ります。設問(1)は熱力学第一法則と比エントロピーの定義式から比内部エネルギーの微小変化の式と、比内部エネルギーの温度に関する偏微分係数と比体積に関する偏微分係数を導出する問題です。仕事は定義式を使います。また、比内部エネルギーの偏微分係数は次の設問(2)で使います。設問(2)は比内部エネルギーが温度の関数になることの証明で、比ヘルムホルツ自由エネルギーの微小変化の式が与えられています。比ヘルムホルツ自由エネルギーは二回偏微分係数を求めてみましょう。比エントロピー、比体積、圧力、温度の関係が導かれます。設問(1)で、比内部エネルギーの温度、および比体積に関する偏微分係数を求めたので、ここでは、初めに比内部エネルギーを温度と比体積の関数として、その全微分を取ってみます。この全微分式の偏微分係数に設問(1)の結果や、比ヘルもホルツ自由エネルギーの二回偏微分係数から導かれた比エントロピー、比体積、圧力、温度の関係式を用いると、比内部エネルギーと温度の関係が導かれます。設問(3)は2室間の気体移動の問題です。気体移動の問題として、最初のケースは、1室が真空状態で気体移動が生じる問題です。2室から成る系は周囲とは断熱されているので、2室を繋ぐ弁の開放前後で系の質量と内部エネルギーは保存されます。このことを用いれば温度変化および系のエントロピー変化は計算できます。次のケースは、2室が先細ノズルで繋がれていて、ノズル内の流れが断熱流れ場合の問題です。初めに定圧比熱を気体定数と比熱比で表すことが求められますが、マイヤーの関係式をから導くことができます。このケースでは、ノズル出口の流速と、臨界圧力比を求める問題が出題されています。問題文で、系は定常状態にあると仮定されているため、この問題は、定常流れのエネルギー保存を考え、先細ノズルの出入口(2室間で)全エンタルピー
が保存されることを使えば、ノズル出口の流速は導出できます。臨界圧力比は出口流速が音速(マッハ数1)に達するときの圧力比なので、上記の設問(3)(e)で求めたノズル出口流速と問題文で与えられた音速の式とが等しくなる時の圧力比を求めます。音速の式中にある温度は、ノズル出口側の温度である
を用いることになります。
問題2-2は、逆カルノーサイクルによる冷凍サイクルの問題です。カルノーサイクルは断熱圧縮、等温受熱、断熱膨張、等温排熱の4つの過程から成るサイクルですが、逆カルノーサイクルは、圧力-比体積線図、および温度-エントロピー線図上で、熱機関とは逆の反時計回りに過程が進みます。断熱過程ではエントロピーは一定であり、圧縮で昇温、膨張で減温します。等温過程では、温度は一定で、受熱過程でエントロピーは増加し、放熱過程でエントロピーは減少します。さらに問題文から、圧縮機出口で乾き飽和蒸気になり、凝縮器(等温排熱)出口で飽和水になります。これらを考慮すれば、設問(1)のT-s線図は描けます。設問(2)は、状態1のエントロピーが、状態1-状態2間が等エントロピー変化であることを考慮すると、表2-1で与えられたエントロピーの値から、状態1の乾き度は計算できます。設問(3)の状態1の比エンタルピーの計算は、前設問の解答の乾き度を用いて飽和状態のエンタルピーを使えば、計算できますが、問題では乾き飽和蒸気のエンタルピーは与えられていないので、計算できません。エンタルピーは熱量です。また、エントロピーは熱量と温度で決まる値です。エントロピーを利用して飽和水から状態1までの熱量を計算することができます。このため、状態1でのエントロピーを計算する必要があり、ここで、状態1の乾き度が利用できます。蒸発器の受ける熱量も、蒸発器でのエントロピー変化を使えば計算できます。同様の考え方で、凝縮器での放熱量も計算できます。受熱量と放熱量が計算できれば、冷凍機の成績係数は求まります。次に、膨張機の代わりに絞り弁を用いると、膨張過程が等エントロピー過程でなくなります。絞り膨張では流速変化を無視すると、断熱で外部に対して仕事を取り出すこともないので、等エンタルピー過程と考えることができます。ただし、絞り膨張によりエントロピーは増加します。このことを考慮すると、設問(6)の状態5の比エンタルピーは求まり、また、受熱量も計算できます。凝縮器での放熱量は膨張機を用いた場合と変わりません。放熱量と受熱量の差が、サイクルが外部から受ける仕事になります。設問(9)の膨張機を用いたシステムと絞り膨張を用いたシステムの成績係数の差は、膨張時に外部に仕事をするか否かの差になります。
院試-過去問では、旧帝大機械系熱力学・熱工学を対象とした2024年までの5年分の過去問の解答集を販売しています。答え合わせ用として、また、解法の理解用にご利用ください。さらに、京大の過去問解答書では、上記の2025年の過去問を含めた6年分の解答集も販売いたします。

