北大2024年院試の熱力学を解いてみました
北海道大学機械系の2024年実施の院試問題は今年の4月上旬から公開されています。2問出題されています。
問1は、熱力学の基本事項を問う6つの設問で構成されています。最初の3設問は、熱量、内部エネルギー、仕事の関係式である熱力学第一法則を、次は内部エネルギーと定積比熱、温度変化の関係式、そして3設問目はエントロピー定義式が問われています。いずれも基本公式を覚えておけば回答できます。4設問目は、正味仕事の問題です。仕事の定義式pdVで計算される仕事は、圧力0の真空に対して行われる絶対仕事になります。ピストン背面に大気圧が作用している場合は、正味の仕事はピストンに作用する圧力と背面に作用する圧力との差圧による仕事になります。設問5は、設問1~4の結果を適用すれば解が得られます。最後はエクセルギーと呼ばれる熱や圧力を仕事に変換する際に得られる最大仕事のことで、重要な概念の一つです。
問2は、ランキンサイクルの問題です。タービン入り口の温度圧力と出口の圧力が与えられていて、出口での蒸気の乾き度を求める問題では、添付されたエントロピーとエンタルピーの表値から、まずはエントロピーを用いて乾き度が求まります。タービンで蒸気は断熱膨張することを考えると出口でのエントロピーが分かります。乾き度が分かると添付の表のエンタルピーを用いてタービン出力も計算できます。理論熱効率は、タービン仕事を入熱量で除せば求まります。問2の(3)以降の設問は、再熱ランキンサイクルの問題になります。初めに高圧タービンの出口の温度とタービン出力が設問されています。添付表中にない値は表中の値を使って直線近似してよいとのことです。断熱膨張から高圧タービン出口エントロピーが既知になるので、エントロピーを尺度として、高圧タービン出口の温度およびエンタルピーを計算できます。タービン出入り口のエンタルピー差でタービン出力が計算できます。高圧タービン出口のエンタルピーが分かると再熱器の吸熱量も計算できます。設問4の低圧タービン出口の蒸気の乾き度は設問1と同様に計算できます。最後の設問の再熱サイクルの理論熱効率は、高圧タービンと低圧タービンの出力の和を、入熱量と再熱器の吸熱量の和で除すれば求まります。