名古屋大学2024年院試の熱工学を解いてみました

5月上旬に公開された2024年実施の院試問題を解いてみました。2024年実施の名大の熱工学は3問で、(1)はファン・デル・ワールスの状態方程式に関する問題で、(2)は2容器の気体の混合の問題、(3)は多層平板の熱伝導方程式の問題でした。

問題(1)のファン・デル・ワールスの状態方程式の問題は、過去に2017年、2019年に同大学で実施された院試でも出題されており、気体が体積変化するときの仕事、内部エネルギー、およびエントロピー変化を求めさせる問題は2017年実施と同じ問題が出題されています。ファン・デル・ワールスの状態方程式を圧力に関する式に変形して仕事が計算できます。内部エネルギー変化の計算では問題文で与えられている内部エネルギーが満足する式が利用できます。エントロピー変化は仕事と内部エネルギーが導きれば計算できます。

問題(2)の2容器内の気体の混合問題は過去に他大学でも時々出題される問題です。解法の基本は、混合前後で質量と内部エネルギーが保存されることです。この2式を適用すれば混合気体の状態量は計算できます。この問題では、初めに一方の容器を真空にして他方の気体を真空中に断熱自由膨張させた場合が問われています。断熱自由膨張後の気体の状態量も、考え方は同じです。真空側容器の気体の質量、内部エネルギーはゼロにすれば計算できます。2)で2容器の気体がそれぞれ断熱膨張をする場合が、少し考え難いかもしれません。これは実際に仕切り板を取り外したときに起こる現象ではなく、仮想的に、それぞれの気体が真空中に断熱自由膨張し、その膨張後の気体が混合すると考えた場合の思考実験的な取扱いになります。なお、断熱自由膨張や2容器の気体の混合問題は、九大2019年実施、東北大2021年,2024年実施、北大2022年,2023年実施、東工大2022年実施などでも出題されています。

問題(3)は平板定常熱伝導方程式の問題で、直接、熱伝導方程式を解かせるのでなく、方程式を離散化式に変形させる問題です。伝熱工学の問題として、2017年以降の他大学の院試も含めて、このような問題は初めて見る問題です。数値解析の経験がある方は、方程式の離散化は問題なく取り組めると思います。平板の両表面の温度と平板厚さを使って、平板の温度勾配を書き表せれば答えを導けます。

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