熱力学・熱工学の各大学の出題傾向

北海道大学:例年2問出題される。1問はサイクルの問題で、もう1問は仕事、エントロピー等、熱力学第一法則と第二法則の問題が出題されることが多い。サイクルの問題は2019年実施試験でブレイトンサイクル、2020年はランキンサイクル、2021年はコンバインドサイクル、2022年はランキンサイクル、2023年はサバテサイクル、2024年はランキンサイクルが出題されている。

東北大学:例年2問出題される。サイクル、熱力学の一般関係式、相平衡とギブスの自由エネルギー、理想気体の混合、絶対仕事と工業仕事、逆カルノーサイクル、閉じた系のエントロピー変化などが出題されてきた。特に相平衡の問題でクラペイロン・クラウジウスの式を扱う問題は頻繁に出題され、2016年以降では、2017年, 2019年, 2020年, 2022年, 2024年に出題されている。

東京大学:例年2問出題され、1問は熱力学、他は伝熱工学から出題される。熱力学では、サイクルの仕事、流出入する熱量、エントロピー変化、熱効率等に関する問題や、理想気体の混合時のエントロピー変化、真空タンク内への理想気体流入時のエントロピー変化、定常流動系のエントロピー変化等が出題された。サイクルに関しては、2016年以降の問題で見ると、2016年, 2017年にオットーサイクル、2021年にヒートポンプ、2023年にブレイトンサイクル、2024年に冷凍サイクルが取り上げられている。伝熱工学からは熱伝導方程式の導出や方程式を解かせる問題が多く出題される。定常問題でも2階の線形微分方程式を解かせる問題(2018年,2019年)や非定常熱伝導方程式の偏微分方程式を解かせる問題(2023年)も出題されているので、2階線形微分方程式の解法や変数分離法等の偏微分方程式の解法を覚えておく必要がある。

東京工業大学:2017年までは伝熱工学の問題も出題されていたが、2018年以降は熱力学だけからの出題になっている。3~5問の問題で構成され、穴埋めや選択問題が多いが、出題範囲は、毎年、熱力学の広範囲な内容から出題される。2018年以降では、理想気体の比熱、マイヤーの関係式、熱力学第一法則、仕事と熱量、熱力学第二法則、エントロピー変化、理想気体の自由膨張、オットーサイクル、ディーゼルサイクル、ブレイトンサイクル、コンバインドサイクル、湿り蒸気とランキンサイクル、ヒートポンプ、冷凍サイクルなどから出題されている。選択問題であっても、基本公式や諸関係式は覚えておく必要がある。

名古屋大学:2~4問出題される。熱力学の一般関係式、マクスウェルの関係式、ファンデルワールスの方程式、理想気体の内部エネルギー、熱力学第一法則、サイクルのエントロピー変化と仕事、閉じた系の仕事とエクセルギー、開いた定常流動系のエネルギーバランスとエントロピー変化、純物質の気液2相平衡(クラペイロン・クラウジウスの式)、熱伝導方程式などから出題されている。サイクルの出題に関しては2018年にスターリングサイクル,2022年にブレイトンサイクルと再生ブレイトンサイクルの問題が出題されている。熱伝導の問題は、2021年に平板の定常熱伝導が、2023年に非定常熱伝導の問題が出題されている。

京都大学:熱力学第一法則、理想気体の内部エネルギー、エンタルピー、およびエントロピー変化、理想気体の比熱、断熱の関係式の導出、マクスウェルの関係式、理想気体混合時のエントロピー変化、ギブス自由エネルギー等から出題される。問題の題材としてこれまでに、吸排気工程を伴うオットーサイクル、ブレイトン再生サイクル、ゼオライトの窒素吸着時の熱力学、粒子からなる系の状態方程式、水素原子の金属結晶への吸着など、熱力学の知識以外にも、問題文の読解力、諸式を扱う数学力、式やグラフの意味する内容の理解力などが試される。

大阪大学:2020年以降の問題に関しては、球の定常熱伝導、接触する2個体のエントロピー変化、ファンデルワールスの状態方程式、等温膨張と断熱膨張後の気体圧力の大小関係、等温環境下において仕切板で分けられた容器内の気体が成す仕事、大気の鉛直方向の温度低下率を、大気が空気の場合と大気に水蒸気が含まれる場合で求める問題、ピストンシリンダ系でシリンダ内の気体がポリトロープ変化する場合の、気体の体積変化、仕事、熱量、エントロピー変化、温度変化等を計算する問題が出題されている。基礎式や諸式の適用による計算には思考力が要求される。

九州大学:例年3問出題される。1問目はサイクルの問題、2問目は熱伝導方程式の問題で、2019年と2022年の問題では、ふく射伝熱、ふく射を考慮した熱伝導の問題が出題されている。3問目は熱交換器の問題と湿り蒸気域を扱う問題が隔年で繰り返される。2024年実施の試験では熱交換器の問題が出されたため、2025年実施の試験では湿り蒸気域を扱う問題が出題される可能性が高い。いずれの問題も計算量は多い。熱交換器の問題では、基礎式に加え、高温流体と低温流体の温度差の式や対数温度差など重要な関係式を覚えておく必要がある。

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